個人事業主且つ青色申告の方の100%が当てはまる今回の、事業主貸と事業主借。
それぞれ見て行きましょう。
事業主貸とは?
事業主貸とは、事業に関係ない費用を事業用の現金や普通預金で払った際の勘定科目のことです。
事業主貸と事業主借共に、青色申告の個人事業主しか使わない勘定科目なので
事業に関係ない費用のほぼ100%を個人事業主本人の私的な支出、とりわけ生活費のことです。
帳簿や決算書に載せられるのは、借方と貸方の少なくとも一方が事業に関係がある場合のみ
(例1)と(例2)も、以下の他の記事の見出しにも出てくるので読んで下さい。
帳簿や決算書に載せられるのは、借方と貸方の少なくとも一方が事業に関係がある場合のみ
この見出しは事業主貸について書いているのですが、そもそも事業主貸を借方で使えるのは
貸方に事業に関係がある勘定科目があるからです。
貸方にプライベートな普通預金や現金だった場合は、当たり前ですが(例1)と(例2)のように記帳はしません。
(例1)事業用の普通預金から、個人事業主の個人用の普通預金に100,000円振り込んだ。
借方 事業主借 100,000円 貸方 普通預金 100,000円
(例2)事業用の現金を使って、個人事業主の自家用車を1,000,000円を払った。
借方 事業主借 1,000,000円 貸方 現金 1,000,000円
貸方は、現金だったら現金、普通預金だったら普通預金としっかりと勘定科目を分けますが
事業と無関係の個人事業主の私的な出費はどんなものでも、事業主借として仕訳します。
家事按分時は注意せよ。
では、以下の場合はどうでしょうか?
(例3)事務所兼住居の家賃100,000円が事業用口座から引き落とされた。家事按分割合は50%です。
借方 事業主借 50,000円 貸方 現金 100,000円
借方 地代家賃 50,000円
事業用の口座から100,000円を使っているので、貸方に全額の100,000円をしっかり仕訳して
借方に事業主貸と地代家賃でも仕訳ができています。
ここを、
としないように!
事業用の口座で、実際に使われているのは100,000円です!
100,000円が出ているのに、貸方を50,000円と記帳すると額が合いませんよね?
まぁ、事務所兼住居の家賃100,000円を、事業主貸と地代家賃で家事按分するのは比較的分かり易いので
こんな間違いをする人はあまりいません。しかし、次の(例4)は僕は実際に勘違いしましたので紹介します。
家事按分時は、減価償却費にも注意せよ!
注意せよキャンペーン多発ですみません笑
では、(例4)。
(例4)事業用の普通預金から、150,000円のMacBookAirを買った。家事按分率は50%。
耐用年数は5年。
さて、資産の取得が出てきましたね笑
今回はややこしくなります。
答えのヒントは、以下の記事のタイトルです。「家事按分の仕訳タイミングとは、資産取得時ではなく借方に費用がある時」
です!
家事按分の仕訳のタイミングとは、資産取得時ではなく借方に費用がある時
ということで、資産の取得が絡む家事按分は注意が必要です。
1・資産計上時は取得価額全額を資産として計上
借方 工具器具備品 150,000円 / 貸方 普通預金 150,000円
「家事按分の仕訳タイミングとは、資産取得時ではなく借方に費用がある時」の通り、
この仕訳では借方に費用はありませんので家事按分はしません。
家事按分をしない本来の理由は、150,000円のMacBookAirを事業用の口座で払っているからです。
だって、家事按分割合が50%だからと言って、半分の額でこのタイミングで家事按分をしたとします。
借方 工具器具備品 75,000円 / 貸方 普通預金 75,000円
MacBookAirは150,000円するんです!事業の口座から75,000円しか減っていないのは額が合わないです。
また、100,000円以上すると固定資産として登録しその後減価償却費に替える仕訳をしないといけないですが、
このタイミングで家事按分しちゃうと75,000円となり、
「事業用の普通預金から150,000円から出ているから固定資産なのか?」
「でも仕訳では75,000円だから固定資産ではなくなるのか?」
というカオスなことになってしまいます。
結論、以下の固定資産の記事ではハッキリと取得価額が100,000円以上の資産のことを固定資産と言っています。
とてもややこしい固定資産と固定資産税について解説!
勿論、プライベートのお金から75,000円を出したら上の仕訳は合っています。
2・費用計上時に、家事按分をする
先にプライベートから75,000円出した時の仕訳を書きます。
プライベートのお金から75,000円を出したら上の仕訳は合っているので、
借方 工具器具備品 75,000円 / 貸方 普通預金 75,000円
100,000円未満なので、取得したその年中に
借方 減価償却費 75,000円 / 貸方 工具器具備品 75,000円
です。
しかし今回は、150,000円全額事業用の普通預金からです。
耐用年数が5年、家事按分割合が50%なので
工具器具備品は150,000円を5年で償却、つまり1年で30,000円を償却
減価償却費も15,000円を5年かけて
事業主貸も15,000円を5年かける。
借方 減価償却費 15,000円 / 貸方 工具器具備品 30,000円
借方 事業主貸 15,000円
を5回繰り返す。
※厳密には、4回。
※最後の5年目5回目は、残存簿価として1円を残して29,999円の償却となりますが、
按分50%については減価償却費で切り上げ計算されますので、下記の仕訳となります。
5年目の減価償却の仕訳
借方 減価償却費 15,000円 / 貸方 工具器具備品 29,999円
借方 事業主貸 14,999円
期末工具器具備品残高 残存簿価1円
まとめると、以下になるので覚えておいて下さい。
残存簿価は、事業主貸の金額から1円引くことで表す。「期首資産残高×家事按分割合-1」
減価償却費からは引かない。
・・・は、1年目以降も家事按分割合が50%であれば合っていますが
5年目までの間に割合が変わればその年ごとに、工具器具備品の額の30,000円を変動させずに、減価償却費と事業主貸の額を変動させます。
1年目 家事按分割合50%
借方 減価償却費 15,000円 / 貸方 工具器具備品 30,000円
借方 事業主貸 15,000円
2年目 家事按分割合60%
ちなみに、家事按分割合とは事業で使っている割合のことです。
借方 減価償却費 18,000円 / 貸方 工具器具備品 30,000円
借方 事業主貸 12,000円
つまり、貸方の工具器具備品の額は 最後の年まで30,000円で常に償却します。
そして当たり前ですが家事按分割合が低くなればなるほど、必要経費にならずに節税ができないということを意味します。
また、どこかの年で家事按分割合が0%になっても
3年目 家事按分割合0%
借方 減価償却費 0円 / 貸方 工具器具備品 30,000円
借方 事業主貸 30,000円
4年目 家事按分割合40%
借方 減価償却費 12,000円 / 貸方 工具器具備品 30,000円
借方 事業主貸 18,000円
5年目は備忘価額として、残存簿価1円が残るのですが0%だとどうなるのでしょうか?
さきほどと同じです。
残存簿価は、事業主貸の金額から1円引くことで表す。「期首資産残高×家事按分割合-1」
減価償却費からは引かない。
5年目 家事按分割合0%
借方 減価償却費 0円 / 貸方 工具器具備品 29,999円
事業主貸 29,999円
事業主借とは?
忙しいので、時間が空き次第こちらも更新します。
まとめ、個人的な感想
僕は起業1年目から2年目以降も売上1,000万円を達成して、税務署職員が自宅に来るまでの間は無申告だった後に
(僕の黒歴史です笑)
白色申告から始めた身ですが、白色申告の収支内訳書は収益と費用しか申告しないものなので、つまり資産についての申告が
ないのと、事業の資金を個人事業主本人の生活費に使っても、個人事業主の生活費は全く事業と関係ないので
事業主貸の勘定科目を白色申告で使うことはほぼ無かった記憶があります。
もし、個人事業主の生活費が必要経費だったら勿論、収支内訳書に記帳しますが。
対して、資産の申告までする青色申告だと事業主借の勘定科目は必要経費ではなかったとしても
事業用の資金という資産を減らして、事業主貸として個人事業主本人への生活費に充てるという仕訳を記帳しなければならないので、事業主借という勘定科目は青色申告で良く出てきます。特に、個人事業主は良く使う勘定科目です。
青色申告の個人事業主は、個人事業主としての所得→プライベートで使う分は事業主借にする。という流れです。
青色申告の法人は、法人としての所得→役員報酬(実質これはプライベートなお金。)という流れです。