さて、前払費用というややこしい勘定科目について説明します。
とくにこれと前払金が紛らわしく、仮払金という勘定科目とも勘違いし易いです。
(立替金と混同することはないかと思いますが・・・。)
前払費用
まずは国税庁のHPからの引用を載せます。
前払費用とは、法人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいいます。
前払費用は、原則として、支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金の額に算入すべきものです。
例を挙げながら説明します。
仕訳例1)当期12月31日が決算日で、当期8月1日に1年分の保険料24万円を払った場合
当期8月1日 借方:支払保険料(費用) 240,000円 / 貸方:普通預金 240,000円
上の仕訳では、まだ「前払費用」という勘定科目がまだ出てきません。
“当期8月1日に1年分の保険料24万円を払った”という部分に注目して下さい。
さて、当期12月31日の決算日になりました。
8月1日に、1年分の保険料24万円を払ってはいるが
当期分は、8、9、10、11、12月の5ヶ月分しか(保険の)役務を受けていません。
よって、当期分の支払保険料は5ヶ月分の24万円÷1年分(12ヶ月分)×当期の5ヶ月分=
10万円しか必要経費(支払保険料)として認められません。
つまり、
当期8月1日 借方:支払保険料(費用) 240,000円 / 貸方:普通預金 240,000円
これを、
当期12月31日 借方:支払保険料(費用) 100,000円 / 貸方:普通預金 100,000円
みたいにしたいのですが、こうしてしまうと
当期の経費として認められる支払保険料の合計額と、減った普通預金の合計額が
借方:支払保険料(費用) 340,000円 / 貸方:普通預金 340,000円になっちゃいますので、
これらの記事で出てくる「仕訳の法則」の通り記帳すると、
当期末12月31日の決算日に
借方:??? 140,000円 / 貸方:支払保険料(費用) 140,000円
という仕訳をすれば、
当期分の支払保険料(費用)が、240,000円−140,000円=100,000円になりますね。
“借方:??? 140,000円”の「???」は、じゃあ普通預金?ではなくて
それだとお金が14万円の返って来てしまうので誤りです。
当期末の時点では保険契約から1年経っておらず、翌期1、2、3、4、5、6、7月の7ヶ月分の(保険)役務が残っている状態なのですが、24万円÷1年分(12ヶ月分)×翌期の7ヶ月分=14万円ってことです!
よって、「???」の勘定科目こそが、今回の記事のタイトルである前払費用として計上するのです!
ちなみに、前払費用は費用という名前なのにこれは資産の1つであることも覚えておいて下さい笑
当期末12月31日の決算日に
借方:前払費用(資産) 140,000円 / 貸方:支払保険料(費用) 140,000円
翌期首1月1日に
借方:支払保険料(費用) 140,000円 / 貸方:前払費用(資産) 140,000円
という仕訳で記帳し完了。
んで、当然の疑問として
24万円を払ったのは確かに当期中の8月1日ではあるけど、払った額をしっかり申告すれば良いんでしょ?
だったら前払費用とか面倒だからこれで良いじゃん!
当期末12月31日 借方:支払保険料(費用) 100,000円 / 貸方:普通預金 100,000円
翌期首1月1日 借方:支払保険料(費用) 140,000円 / 貸方:普通預金 140,000円
こういうのがあると考えられますが、費用というのは発生主義に則って計上し記帳しなければならないので
こんな面倒なことになるのです。
長期前払費用とは?