原文を載せて、それに解説を加える形式で記事を構成していきます。
企業会計原則・前文
一
我が国の企業会計制度は,欧米のそれに比較して改善の余地が多く,且つ,甚だしく不統一であるため,企業の財政状態並びに経営成績を正確に把握することが困難な実状にある.我が国企業の健全な進歩発達のためにも,社会全体の利益のためにも,その弊害は速やかに改められなければならない.
又,我が国経済再建上当面の課題である外貨の導入,企業の合理化,課税の公正化,証券投資の民主化,産業金融の適正化等の合理的な解決のためにも,企業会計制度の改善統一は緊急を要する問題である.
従って,企業会計の基準を確立し,維持するため,先ず企業会計原則を設定して,我が国国民経済の民主的で健全な発達のためのの科学的基礎を与えようとするものである.
二
1 企業会計原則は,企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから,一般に公正と認められたところを要約したものであって,必ずしも法令によって強制されないでも,すべての企業がその会計を処理するのに当たって従わなければならない基準である.
2 企業会計原則は,公認会計士が,公認会計士法及び証券取引法に基づき財務諸表の監査をなす場合において従わなければならない基準となる.
3 企業会計原則は,将来において,商法,税法,物価統制令等の企業会計に関係ある諸法令が制定改廃される場合において尊重されなければならないものである.
企業会計原則とは、会計時に遵守しなければならない基準のことです。
この原則の成り立ちは、実務の中で慣習として培って行った中から一般に公正妥当と認められたところを要約してできました。
公正な会計処理を行うための原則であり、決算書(財務諸表)の監査をするときにも使われています。
法律ではないので破っても直接的には犯罪にはならないが、間接的になる恐れがあるので
企業が会計業務を実施する際には無難に遵守をするのがオススメです。
というより、しないといけません笑
企業会計原則は、以下から成っています。
- 一般原則
- 損益計算書原則
- 貸借対照表原則
- 企業会計原則注解(重要性の原則などについて記されたもの)
それぞれ、上から順に説明します。
一般原則
一般原則は損益計算書と貸借対照表にも通ずるものなので、企業会計原則の最高規範とされています
一般原則は、以下より成っています。
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 資本取引・損益取引区分の原則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
1:真実性の原則
一 企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。
嘘偽りのない決算書(財務諸表)を作れということです。
2:正規の簿記の原則
二 企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
複式簿記で記録せよとはどこにも書いていないが、実務上は複式簿記で記録することになっているので
複式簿記の記事をどうぞ。
複式簿記とは?
3:資本取引・損益取引区分の原則
三 資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。
「資本取引・損益取引区分の原則」とは
“資本取引と損益取引を区分せよ!”と要請されているということで、それはつまり結果的に
“資本剰余金と利益剰余金の区分せよ!”と要請されているということです。
それぞれの言葉の意味がわからないと思うので、以下の記事を先に読んで下さい。
資本取引とは?
損益とは、「事業による収益とそれに付随する費用」ということなので
を発生させる営業取引(損益取引)と区別されています。
区別されているということは、資本取引は損益計算書には載らないということを意味します。
この意味することは、税務上での課税方法で違いがあるためで、法人税は営業利益に対して課税されるものであって資本に対しては課税されないからです。
4:明瞭性の原則
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、
企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。
この明瞭性の原則を、損益計算書と貸借対照表に反映させたものが
後に出て来る総額主義の原則である。
5:継続性の原則
企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。
6:保守主義の原則
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。
7:単一性の原則
株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。
損益計算書原則
一 損益計算書の本質
損益計算書は、企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して当期純利益を表示しなければならない。
A・すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。
前払費用及び前受収益は、これを当期の損益計算から除去し、未払費用及び未収収益は、当期の損益計算に計上しなければならない。
B・費用及び収益は、総額によって記載することを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない。
C・費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。
現金主義 金銭の授受の際に計上
さて、先ずは馴染みが深いこの現金主義から説明します。
金銭の授受に基づいて費用と収益を計上する考え方を「現金主義」と言います。
現金主義のメリットは、
- 「取引の管理に対する手間が少ない」
- 「不正が発生しづらい」
などが挙げられます。
対してほぼ唯一のデメリットは、
「未来の費用・過去の収益の存在によって、期間損益計算が成り立たなくなること。」です。
【未来の費用】
(※未来の費用の一部に、前払費用という決算期をまたがる時にしか出てこない勘定科目があり
当期(現在)→翌期(未来)を例にしているだけで、当期(現在)→当期(未来)でも同じ。)
例1)・普段使うコピー用紙1万円分(消耗品)を購入し、後日代金を払った場合
この例1)の文章を、100%再現した仕訳例は
後述する発生主義・実現主義に則ったものです。
当期12月1日 借方:消耗品費 10,000円 / 貸方:未払金 10,000円
翌期1月1日 借方:未払金 10,000円 / 貸方:普通預金 10,000円
これが現金主義だと・・・
当期12月1日 仕訳なし
翌期1月1日 借方:消耗品費 10,000円 / 貸方:普通預金 10,000円
↑本来当期(現在)の費用だが、翌期(未来)の費用になってしまう。つまり、支払う前にも現れる取引が帳簿に現れなくなってしまいます。
これの何がデメリットなの?
と思うかも知れませんが、
当期12月1日に 借方:消耗品費 10,000円 / 貸方:未払金 10,000円
として仕訳して記帳すれば、今年中の必要経費が増えて今年分の納税額が減るかも知れません。
それよりかは、今年中に購入した消耗品を今年中に記帳しなかったら
購入したことを忘れてしまったら「あれ、何でこれがあるんだろ?何か経理が記帳し忘れたのかかな?」
だったり、
当期12月1日に 借方:消耗品費 10,000円 / 貸方:未払金 10,000円
と記帳しないことで、
翌期1月1日 借方:未払金 10,000円 / 貸方:普通預金 10,000円
という記帳をし忘れるというリスクも生じて来ます。
例2)・12月31日が決算日で8月1日に1年分の保険料24万円を払った場合
※この例は、前払費用の説明の為に使った例と同じ例です。前払費用についてこのリンク先で学んでから、
この未来の費用の例2)について学んだほうが、損益計算書の本質の各主義の理解が深まると思います。
先程言った、決算期をまたがる時にしか出てこない勘定科目である前払費用です。
この例2)も後述する発生主義・実現主義に則ったものです。
当期8月1日 借方:支払保険料(費用) 240,000円 / 貸方:普通預金 240,000円
翌期12月31日(今期末) 借方:前払費用(資産) 140,000円 / 貸方:支払保険料(費用) 140,000円
翌期1月1日(翌期首) 借方:支払保険料(費用) 140,000円 / 貸方:前払費用(資産) 140,000円
これが現金主義だと・・・
当期8月1日 借方:支払保険料(費用) 240,000円 / 貸方:普通預金 240,000円
当期12月31日(今期末) 仕訳なし
当期1月1日(翌期首) 仕訳なし
↑本来翌期(未来)にも費用があるが、当期(現在)の費用だけになってしまう。つまり、支払った後にも現れる取引が帳簿に現れなくなってしまいます。
【過去の収益】
(作成中ですが、以下の文章をそのままお読み頂くだけでもこの記事の本質は理解できます。)
つまりこの金銭の授受に基づいて費用と収益を計上する考え方から来る現象は、
原文の損益計算書の本質のAの“発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。”
という文言に反するので、現金主義は企業会計原則にも反する主義なのです。
損益計算書原則は企業会計原則の1つだからです。
それを補うため、以下の発生主義が生まれました。
発生主義の原則 費用を取引の発生の際に計上
Aの、
“すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。”
〜
“前払費用及び前受収益は、これを当期の損益計算から除去し、未払費用及び未収収益は、当期の損益計算に計上しなければならない。”
のことを、「発生主義の原則」と言います。
つまり、「金銭の授受とは無関係に、費用と収益は発生した期間に計上せよ!」ということです。
あれ、この見出しには「費用を取引の際に〜」しか載っていないけど、
国税庁のHPでは収益も発生主義じゃないの?
という疑問が出て来ますが、この発生主義には収益を多く計上してしまう欠点があります。
その欠点を補うようにして、収益は実際に実現したものだけを収益として計上する「実現主義」が生まれました。
日本の会計基準では、費用は「発生主義」で、収益は「実現主義」で認識するのが原則となっています。
ちなみに、会計期間という概念により企業会計では、企業が1つの会計期間内にどれくらいの費用が発生し、
収益を得たのかを計算することになりますが、この考え方を「期間損益計算」といいます。
発生主義はこの期間損益計算を満たすための考え方だと言えますね。
実現主義の原則 収益を実現の際に計上
Aの、
“未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。”
のことを、「実現主義の原則」と言います。
つまり、「収益は実現したもののみを計上せよ!」ということです。
勘違いし易いこととして、客から現金を直接手渡されたり、普通口座へ入金されて「売上」
という勘定科目を使って仕訳するタイミングが収益の実現のタイミングであると考えがちですが、
それは残念ながら現金主義であり、「売掛金」という勘定科目の存在から
実は商品(財・役務)の提供を以て、営業収益(売上・役務収益)の発生とします。
収益に関しては以下の個別記事からどうぞ。
総額主義の原則
“B・費用及び収益は、総額によって記載することを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない。”
の部分を総額主義と言います。
これは、一般原則の明瞭性の原則を損益計算書に反映させたものです。
意味はそのままで、
「売上が10,000円で原価が2,000円だから、売上8,000円で原価0円と計上しても
良いでしょ!」は、明瞭性の原則とそれに基づく総額主義に反するということです。
費用収益対応の原則
“C・費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。”
の部分を費用収益対応の原則と言います。
これは、仕入・製造原価(材料費・労務費・経費)・商品と、
売上という勘定科目を使う小売業や卸売業、製造業の企業に大きく関係する原則です。
小売店を営む会社が、小売目的の商品を仕入れて普通預金で払った。
仕入 10,000円 / 普通預金 10,000円
じゃあ、「この仕入は事業のためのだから、すぐに10,000円が必要経費だ!」ではないです。
仕入れた商品が15,000円で売れた。
普通預金 15,000円 / 売上 15,000円
商品が売れてから、仕入が必要経費(費用)になるということです。
二 損益計算書の区分
損益計算書には、営業損益計算、経常損益計算及び純損益計算の区分を設けなければならない。
A・営業損益計算の区分は、当該企業の営業活動から生ずる費用及び収益を記載して、営業利益を計算する。
二つ以上の営業を目的とする企業にあっては、その費用及び収益を主要な営業別に区分して記載する。
B・経常損益計算の区分は、営業損益計算の結果を受けて、利息及び割引料、有価証券売却損益その他営業活動以外の原因から生ずる損益であって特別損益に属しないものを記載し、経常利益を計算する。
C・純損益計算の区分は、経常損益計算の結果を受けて、前期損益修正額、固定資産売却損益等の特別損益を記載し、当期純利益を計算する。
D・純損益計算の結果を受けて、前期繰越利益等を記載し、当期未処分利益を計算する。
三 営業利益
営業損益計算は、一会計期間に属する売上高と売上原価とを記載して売上総利益を計算し、これから販売費及び一般管理費を控除して、営業利益を表示する。
A 企業が商品等の販売と役務の給付とをともに主たる営業とする場合には、商品等の売上高と役務による営業収益とは、これを区別して記載する。
B 売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。ただし、長期の未完成請負工事等については、合理的に収益を見積もり、これを当期の損益計算に計上することができる。
C 売上原価は、売上高に対応する商品等の仕入原価又は製造原価であって、商業の場合には、期首商品たな卸高に当期商品仕入高を加え、これから期末商品たな卸高を控除する形式で表示し、製造工業の場合には、期首製品たな卸高に当期製品製造原価を加え、これから期末製品たな卸高を控除する形式で表示する。
D 売上総利益は、売上高から売上原価を控除して表示する。
役務の給付を営業とする場合には、営業収益から役務の費用を控除して総利益を表示する。
E 同一企業の各経営部門の間における商品等の移転によって発生した内部利益は、売上高及び売上原価を算定するに当たって除去しなければならない。
F 営業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費を控除して表示する。販売費及び一般管理費は、適当な科目に分類して営業損益計算の区分に記載し、これを売上原価及び期末たな卸高に算入してはならない。
ただし、長期の請負工事については、販売費及び一般管理費を適当な比率で請負工事に配分し、売上原価及び期末たな卸高に算入することができる。
売上総利益
「損益計算書の区分」に、売上総利益がないので先にこれから説明します。
■“営業損益計算は、一会計期間に属する売上高と売上原価とを記載して売上総利益を計算し、”
■“D 売上総利益は、売上高から売上原価を控除して表示する。
役務の給付を営業とする場合には、営業収益から役務の費用を控除して総利益を表示する。”
売上総利益とは、売上高(厳密には営業収益)から売上原価を差し引いた利益で、「粗利益」と呼ぶこともあります。
もいいます。
売上総利益=営業収益-売上原価
主な事業でどのくらい稼ぐことができているか知ることのに大事な式なので覚えておいて下さい。
売れた(実現主義で、商品を提供した)ことで必要経費になった、仕入、役務原価、製造原価(材料費、労務費、経費)のことを
まとめて「売上原価」と言います。
売上総利益=営業収益-売上原価
という式の“営業収益-売上原価”は以下のように業態によって分けられます。
小売業の営業収益-売上原価=売上−仕入
サービス業の営業収益-売上原価=役務収益−役務原価
製造業の営業収益-売上原価=売上−売上原価(材料費、労務費、経費でも、製造原価でもない。)
売上原価については次の見出しをどうぞ。
売上原価
以下の記事も併せて読んで下さい。
商品を仕入れている業態の売上原価=
期首商品棚卸高+当期商品高-期末商品棚卸高
or
期首商品棚卸高+当期仕入高-期末商品棚卸高
商品と仕入の違いは以下の記事をどうぞ。
役務原価→仕掛品を仕入れている役務提供業態の役務原価=
期首仕掛品棚卸高+当期仕掛品高-期末仕掛品棚卸高
製造原価を仕入れている業態の売上原価=
期首製品棚卸高+当期製品製造原価-期末製品棚卸高
※製造原価の計算式は次の通りとなります。→当期製造原価=期首仕掛品棚卸高+当期製造費用-期末仕掛品棚卸高
なぜ製造原価ではなく「製品」なのかと言えば、売れた時つまり売上や売上債権の発生によって、
売上原価に振り替えられる勘定科目が製品だからです。
↑製造原価、製品については誤っていると思われ。。。
以下詳しく知りたい場合。
営業利益
四 営業外損益
営業外損益は、受取利息及び割引料、有価証券売却益等の営業外収益と支払利息及び割引料、有価証券売却損、有価証券評価損等の営業外費用とに区分して表示する。
五 経常利益
経常利益は、営業利益に営業外収益を加え、これから営業外費用を控除して表示する。
六 特別損益
特別損益は、前期損益修正益、固定資産売却益等の特別利益と前期損益修正損、固定資産売却損、災害による損失等の特別損失とに区分して表示する。
七 税引前当期純利益
税引前当期純利益は、経常利益に特別利益を加え、これから特別損失を控除して表示する。
八 当期純利益
当期純利益は、税引前当期純利益から当期の負担に属する法人税額、住民税額等を控除して表示する。
九 当期未処分利益
当期未処分利益は、当期純利益に前期繰越利益、一定の目的のために設定した積立金のその目的に従った取崩額、
中間配当額、中間配当に伴う利益準備金の積立額等を加減して表示する。
貸借対照表原則
作成途中
企業会計原則注解(重要性の原則などについて記されたもの)
作成途中